電通事件より ~下がる労働生産性 開くキャリア格差~
みなさんこんにちは!ショーゴ(@sho_trip)です。
先日発覚した「電通事件」について、既に多くの報道がなされ、様々な方が過剰な時間外労働に警鐘を鳴らしたり、広告業界の風習、仕事への向き合い方などに私見を述べていますが、僕は少し違った視点から思うところがあったのでまとめてみました。
それではどーぞ。
「電通事件」とは
いわゆる「電通事件」とは、大手広告代理店「電通」の女性新入社員が昨年12月に過労のため自殺した事件を指し、これまでも様々な視点でまとめられています。
過去にも同様の事案があり、そちらを指す場合もありますが、いずれにしても電通における過労死事案を指すものと捉えてください。
事件の概略などは以下より参照下さい。
参照
※事件概略
※同様の事件がさらに発覚…
常態化する広告業界の悪習
今回のこのニュース、コンプライアンスに対する意識が高まっている近年にあってという社会情勢の変化ももちろんあるかと思いますが、以前広告畑の仕事をしていた僕やその周辺からは、正直同様の経験やそれが日常であった時期を過ごしたことがある人がほとんどでした。
恐らく同様の案件は電通に限らず広告業界では常態化しており、引っぱり出せばたくさん出てくるのだろうと思われます。
実際に元広告業界大手に勤務されていた方が広告業界の悪習についてまとめていらっしゃる記事もありました。
引用 おはよウサギ!
今回の事件をきっかけに少しでも改善されることを願うばかりではありますが、別の視点では【社内の業務管理・教育】の観点で今後に対する心配もあるかと思います。
過剰報道は労働生産性の低下に繋がりかねない
今回の事件を知って僕が感じたことは別な視点からの懸念でした。
信頼関係を築けない、管理職としての未成熟はもちろんあるんだろう。
— ショーゴ@繋げるひと|就カフェ☕️ (@sho_trip) 2016年10月22日
ただ実際、いわゆる管理職以上と呼ばれる人たちは、もはやどこまでが指導・指摘と扱われるのか日々戦々恐々で、無難に、面倒を避けるために部下のダメなところを指摘しなくなる。
そうしてますますこの国の労働生産性が下がる。
被害者の女性社員が投稿したツイートには上司から言われた厳しい言葉が並び、それがネット上での拡散・擁護に拍車をかけている感があります。
参照
確かに現実として過剰労働だったのでしょうし、上司から言われたことも主旨としてこのような内容だったのでしょう。
しかし、皆さんも経験あるかと思いますが、ツイッターでの発言や自身が感情を悪化させている人への表現は得てして『盛られる』ものです。
私たちのような当事者・関係者ではない人々は事実は事実として受け止めつつも、表現を額面通り受け取って過剰反応しないほうが良いのではないでしょうか。
なぜなら、過剰反応は最終的に
【日本の労働生産性をますます下げる】
結末に繋がりかねないからです。
今回の事件について、
現在いわゆる管理職に就いている方々は今、困惑しているのではないでしょうか。
終身雇用の崩壊、コンプライアンスへの厳しい世間の目などがある中、部下への指導・教育手法は高度化しており、自分たちが新入社員だったときに上司にされていたことをそのまま行なうのは到底通用しません。
心の奥底で信頼関係で繋がりつつの厳しい指導、そういった互いに相手の本心を推し量る関係性は今やなく、まずはわかりやすく表面的に信頼関係を築かなくては指摘もままならない。そんな悩みと管理職者は日々向き合っているかと思います。
部下と向き合うことを避ける管理職が増えれば、結果として企業の人材レベルの劣化を招き、結果として1人当たりの労働生産性が低下、企業の成長速度を押し下げることにも繋がりかねません。
『凡人』でも仕事で磨かれた時代
僕自身、大学時代はバイトと音楽と大学祭の事しか考えていないどーしよーもない大学生でした。
そんな僕が新卒入社で入った企業はこれから成長期に入る時期にあった地元中小企業。
新卒採用に力を入れ、新卒総合職に積極的にチャンスを提供するという方針に惹かれ入社した僕を待っていたのは機会提供するに値する人材に育てるためのスパルタ環境。
詳細についてはここに書くのは憚れるくらい酷かったので省きますが、労働環境としてははっきり言って今回の電通事件以上の状況でした。
ただ、それ自体は恐らく珍しくもなく、内心「自分のほうが酷かったよ」と思っている人は世の中にたくさんいらっしゃるんだろうと思います。
(空気感的に声に出せないだけで)
実際、その当時は心身ともに本当に厳しい状況でした。
が、そんな私も30代後半になり、有難いことに結果として今は転職を経てそれなりのポジションで働くことが出来ています。
つまりこれまでは、いわゆる向上心や自己成長意欲がない人でも無理やり仕事で鍛えられてそれなりに働けるようにさせられていたのではないか、ということ。
だからと言って、労働時間超過が是ということではありません。
世の空気感として当事者・関係者以外の人までが過剰反応することで、労働者側がそこまで環境が酷くないのにそれを振りかざすパターンや、管理職側がどこまでが指導・指摘になるのか、線引きが不透明で怖いので部下の指導から逃げるといった状況になっているのではないか、そういう懸念が今後考えられます。
拡大する20代のキャリア格差
では、その結果何が起きるのか。
シンプルに言うと、【自立自走出来る人】かどうかが大きなポイントになる。
それにより世代内でのキャリア・年収格差が拡大する可能性があるのではないか、ということ。
これまではどんな人でも社会に出てから仕事を通じて能力開発が行われていたものが、今後は上司による教育・指導の困難さから、そもそも社会に出る時点で
『自己成長意欲があり』
『目標意識が高く』
『モチベーションコントロールが出来る』
こういったマインドを持ち得ている人だけが、自ら進んで成長のための行動を起こし、チャンスを掴む世の中になっていきそうです。
管理職に求められること
とはいえ、管理職にあたっている人々はSNSや報道でのバッシングを恐れて部下の教育を放任するわけにはいきません。
これまでなら終身雇用を背景に、『気合と根性』で乗り切らせることが出来たかもしれませんが、今後は部下とより丁寧なコミュニケーションを取り、信頼関係を紡いでいく『強い意志』と『高い技術』が求められます。
そのためのポイントは以下の3点。
●部下の大切にしていることを知り、価値観を尊重する
●部下の将来の夢に寄り添い、共にキャリアデザインする
●部下のタイプに合わせた指導を行なう
どんなに正しい事を言っても、心に響くかどうかは『誰に言われたか』が左右します。
信頼関係なき指摘・指導はよりマイナスになるだけです。
日々のコミュニケーションを通じて部下のことをよく理解し、チームのビジョンと部下のキャリアステップを重ね合わせていけるか。
そこが今後管理職者にとして技術を問われるのと同時に、チームで成果を創れるかの分かれ目になると僕は考えます。
ということで、電通事件を通じて、業務管理・人材教育の在り方という別な視点からまとめてみました。
それでは今回はこの辺で。
Thank you for your time!