見知らぬ天井を見上げて 〜時間も健康も有限だ〜
突然の激痛で目が覚めた。
朝4時。右下腹部に内側から鈍く、重たい痛みが襲う。
よろめきながらトイレに行っても何も解消しない。
居間に戻ると痛みはさらに増し、歩くことも出来ず、ソファに突っ伏してしまう。
人生で初めて味わう、張り裂けそうな痛み。
脂汗が止まらず、呼吸をするのもままならず、救急車、と声を絞り出すのが精一杯だった。
途中の記憶がない。
何となく覚えているのは激しい痛みの中、救急隊員の呼びかけに応答していたことと、ストレッチャーに乗せられ、見たことがない空と天井を見上げていたこと。
尿管結石だった。
これまでの人生で怪我や骨折は沢山したが、病気らしい病気にはかかったことがない。
そんな僕にとって尿管結石は間違いなく『人生最大の大病』だった。
余談だが、尿管結石は『世界三大激痛』(諸説あり)のひとつらしい。
1)群発頭痛
2)心筋梗塞
3)尿管結石
引用
とはいえ、群発頭痛と心筋梗塞はそのまま亡くなってしまう方も多いので、生きて味わえる?病気の中で尿管結石が『痛みの王様』と呼ばれ最も痛いそうだ。
笑えない。
病院で痛み止めの処置をされ、とりあえず地獄の苦痛から解放されたものの、下腹部に鈍い痛みが波のようにやってくる味わったことのない感覚。
「ああ、自分は病気なんだ」
とその時初めて思った。
右腎臓から尿路に落ちた結石は3ミリ。
それほど大きくはなく、手術や入院も必要ないそうだ。
痛み止めと石が出やすくなる薬を処方され、あとはひたすら水を飲んで運動し、自力で出せと言われた。
それにしてもひとつ大きな違和感があった。
お医者さんが『うすら笑って』いるのだ。
救急病院でも、その後行った泌尿器科でも。
こっちはこんなに痛い目にあっているのに、もう死んじゃうんじゃないかと思ったのに、なんでうすら笑いながら『水飲んで頑張って出して』って言われなきゃならんの。
理由はひとつ、
『すぐ死ぬような病気じゃない』から。
死ぬほど痛いが、痛みを止めてしまえばあとは石を出すだけ。
仮にある程度長期間出なくても死ぬようなものではないから、医師や看護師の熱量が高くないようだ。
せつない。
そんなこんなで、かれこれ一週間、痛みの波に耐え、ひたすら水を飲みジャンプし(めちゃめちゃ滑稽だった)、石が出るのを待っていたが、なかなか石は出ない。
飛行機がドクターストップで出張出来ないなど、仕事にも支障が出ていて、石が出ないストレスもあり、正直精神的に結構参っていた。
そんな中、この一週間で思ったことはふたつ。
●健康について
●時間の使い方
月並みではあるが、『健康の有難味』は失って初めて気づくもの。
これは本当にそう思う。
これまで健康であるということを無意識のうちに当たり前かのように思っていたが、五体満足で活動出来ることがどれだけ有り難いことなのか。
また、それと同時に『いつまで健康で居られるのだろうか』という気持ちになり、時間の使い方を改めねばと考えた。
やるべきことをするのは当たり前だけど、
何となく過ぎゆく日々にのまれず『やりたいこと』にもっと時間を使わないと。
本を読み、映像を観て、インプットする。
ブログや記事を書き、研修や講演をし、アウトプットする。
人と出会い、面白いことを一緒に考え、動く。
もっともっとやらないと。
少しだけど不自由を知って、本当の意味で理解出来た。
時間も健康も有限だ。
今日、病院で一週間検診。
レントゲンの結果、石は無かった。
出た感覚は無かったが、いつの間にか出ていたらしい。
さて、完治したし。
じゃあ今日からバリバリ動くぞっ!
やる気がみなぎる僕にお医者さんが言った。
「そうそう、レントゲン見たら左腎臓に予備軍ふたついるから。いずれくるよ。」
その顔を見ると、やっぱ、うすら笑っていた。
※参考 尿管結石について